岩手県遠野市には、子授けや腰痛治癒のご利益を持つとされる珍しい石神があります。
それは「山崎のコンセイ様」と呼ばれています。

民話のふるさと【遠野物語】で有名な町だね



石神、子授けと聞いてピンとくる方いますよね?隠されながらもヒッソリと大切に崇敬されている信仰をご紹介します❣️
今回の画像も閲覧注意です!
山崎のコンセイ様とは


山崎のコンセイ様とは、岩手県遠野市土淵町にある「金勢神社」の御神体を指します。
御神体とは奥の院や本殿など見えない所に安置されているものですが、金勢神社の拝殿を覗くとビックリ仰天にすぐ拝むことができてしまいます。
それは男根形をした石神で、地元では「コンセイサマ」「金勢様(こんせいさま)」と呼び親しまれております。
土淵村から小国へ越える立丸峠の頂上にも昔は石神があったと言う。今は陽物の形を大木に彫刻してある。この峠については金勢様の由来を説く昔話があるが、それとよく似た言い伝えを持つ石神は、まだ他にも何ヶ所かあるようである。土淵村字栃内の和野という処の石神は、一本の石棒で畠の中に立ち、女の腰の痛みを治すといっていた。
金勢を祀る神社は遠野だけでなく、古い信仰を残している地域では結構お見かけします。もちろん全国にも?東北地方ではなかなかの確率で発見できますよ💡神社境内をくまなく散策してみてくださいね。
実はこのコンセイ様は、昔から存在は知られていたようですが場所がわからないままだったのです。しかし砂防工事の際に偶然土砂の中から発見されたと伝えられており、その後、地域の人々によって改めて現在の場所に祀られるようになったと言われています。
16話の中に「一本の石棒で畑の中に立ち」とありますが、畑のど真ん中におっ立っていたのでしょうか。畑のど真ん中にある神社といえば、遠野の荒神様が思い当たります。
子授け・子宝の神様としてのご利益


コンセイ様のご利益は以下の通りです。
- 子授け・出産
- 縁結び
- 豊穣豊作
- 子孫繁栄
- 家内安全
- 婦人の腰痛治癒
女性の腰痛平癒 とは? と思いますよね。子を授かるために身体づくりや、出産の時の腰の痛みを和らげるような意味合いなのかもしれません。
とにかく見た印象の感じそのまんまです。山崎のコンセイ様は、男性性を祀る性神様なので豊かな生殖能力をもたらす生産の神様です。というわけで、特に 「子宝」を願う人にとって”霊験あらたか”な頼れる神様なのです。
古くから子どもを望む夫婦が参拝し、御神体を撫でたり、タワシで磨いたりして祈願する習わしがあったそうです。
現代でも「子宝を授かりたい」と願う人が訪れることがあり、祈りの場として静かに息づいています。


コンセイ様に込められた民間信仰の背景


日本各地には、男根や女陰をかたどった石や木を祀る神社が存在します。
こういった形状の石は陰陽石とも呼ばれています。コンセイ様は陽であり、傍には陰となる女性性を象徴する石が並んでいたりもするようです。現在でいう所の夫婦岩などがざっくりと陰陽石と言えますよね。
また民話に出てくる石棒が畑のど真ん中に祀られていたことから、この陰陽の性的象徴が人間だけでなく食べ物への豊穣の願いが込められていたと思います。
陰陽石は「生命の循環と結びへの祈り」であったのでしょう。
現在では公に男根を祀っている神社はとても少ないのですが、記紀神話由来の御祭神を祀る本祭殿の片隅に隠れるようにして未だ残されています。
人間の営みには必要不可欠な豊穣の神様がなぜ隠されている?今の時代風潮から考えると分かりますけどね。
そんな時代風潮が始まったきっかけとは、明治時代の政府の方針による神仏判然令や廃仏毀釈があったからではないかといわれています。
明治政府以前の神様と仏様が混合した信仰から、神と仏を分け日本神話に登場する神名を名付けるという大掛かりな宗教改革。民間信仰の生殖器の形状の石を淫祠邪教(いんしじゃきょう)とされ、多くの性神が取り壊されました。
その中で遠野に生き残った山崎のコンセイ様は、貴重な「性神信仰」と言えるでしょう。
山崎金勢様まつり(例祭)
毎年5月5日には【山崎金勢様まつり】が開催されています。
御神体を神輿で担ぎ、女性たちが御神体をタワシでゴシゴシするというご神事が執り行われるそうで、子授けや豊作を願う参拝者でにぎわいます。
昔は近隣からも多くの人々が訪れ、地域の春祭りとしての役割を果たしてきました。
石棒を担いだりと奇祭に見えるかもしれませんが、かつての人々にとっては「命をつなぐための純粋な信仰」であり、今もその想いがお祭りの中に息づいています。
基本情報・アクセス


社名 | 金勢神社 |
所在地 | 岩手県遠野市土淵町栃内16地割15 | 〒028-0551
TEL | 0198-62-1333(遠野市観光協会) |
受付時間 | 不明(参拝は常時) |
駐車場 | あり ※細い道ですが境内まで車で行けます周辺に駐車スペースあり |
御朱印 | なし |
公式HP | ー |
アクセス | ●遠野駅から車で約15分 ●最寄りバス停:土淵線「恩徳」方面「山崎」下車/徒歩約18分 | ●釜石自動車道遠野ICから車で約13分
遠野に限らずですが、人里離れた神社は熊に注意です。。熊鈴や音楽を鳴らす・・最近は危ういので車で行くか例祭時。または大勢で参拝などが宜しいかと。


現代の子宝祈願と民俗文化をつなぐ
古代から続く性神信仰は、子孫繁栄や生命への祈りそのものでした。
山崎のコンセイ様の御神体を見ると、明治政府による西洋文化導入以前の日本人は、性に対してずっとおおらかであったことが想像できます。
万葉集や風土記にも、性をほのめかす逸文が数多く残されており、春や秋の農耕行事や収穫祭には【歌垣】と呼ばれる未婚の若い男女が集まって歌を掛け合う風習がありました。(現代でいう婚活かな?)
地域によっては「かがい」と呼ばれ、恋愛や結婚そして新しい命の誕生につながる出会いの場でもあったのです。
興味のある方は、ぜひ「歌垣」を検索してみてください。古代の日本人の性に対する価値観が見えてきますよ🌸
少子化や不妊の悩みが増える今、山崎のコンセイ様は「子を授かりたい」という願いに寄り添ってくれるわかりやすい信仰の神様です。
性神信仰は、性を恥ではなく「生命を肯定する文化」として示すものであり、人類が命をつなぐ祈りを形にしてきた証です。
そう、山崎のコンセイ様は民族信仰の有形文化財❣️として現代に生き続けています。
訪れる人には「新しい命を願う場」、研究者や日本文化好きには「日本人の根底にある信仰」を学べる場でもあります。
山崎のコンセイ様を訪ねることで、森羅万象生命の祈りの原点に触れられるかもしれませんよ。



真理とは、当たり前の生活の中に隠れていたりします。
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